アニメで世界をつなぐ!海外マーケティングの挑戦
海外プロモーションのプランニングや統括、プロモーション予算管理、ソーシャルメディア戦略、海外イベントへの参加交渉など、アニメ作品の海外マーケティングに携わっている深田 優作。海外にも広く日本アニメの魅力を伝えたい。その熱意に突き動かされる彼が、グローバルマーケティングの醍醐味、未来を語ります。
出会いは突然に。大学4年生で急きょ進路を変更
話題のアニメ作品に携わっているポニーキャニオン。その海外マーケティング部アニメグループにて、チームを牽引し、日本アニメの魅力を海外に広めるべく施策を立案、実行している深田 優作は、大学卒業後から現在に至るまでの15年近く、アニメに携わる仕事をしています。意外にも「子どものころはそこまでアニメやマンガに深く触れていたタイプではなかった」という彼の人生に大きな変化をもたらしたのは、ある作品との出会いでした。
深田
大学4年の4月、SNSを眺めていたら自分がフォローしている友人や先輩後輩が、何やら同じアニメの話題で盛り上がっていたので、調べてみるとTVアニメ『けいおん!』で、主人公が当時僕も持っていたレスポールタイプのギターを抱えていたんです。一気に興味を惹かれ作品を観てみたらドハマりして、とくに音楽商品を買い揃え、最終的にはアニメ業界に入りたい!と思い立ち、そこからいわゆるSIerの企業から進路変更をすることにしました。
当時、京都の大学に通っていたのですが、世界的にも有名なアニメ制作会社が京都にあることを知りまして。定期採用の時期が平均よりも少し後ろの時期に設けられていたおかけで、採用試験を受けることができ、幸運にもご縁をいただけたんです
アニメ業界に飛び込んで得た学びと気づき
新卒で就職したアニメ制作会社では事務系の総合職に就き、学生時代にサークル活動やアルバイトでWebサイトを中心とするデザインやシステム開発を行っていた経験で培ったスキル、短期語学留学で培った英語力、大学で専攻していたジャーナリズム、広告や広報などメディア関連の知識を生かせたという深田。その後は、レコード会社を母体としてアニメを中心に映像作品の企画・製作などを手がける総合エンターテインメントカンパニーに転職しました。何が彼を突き動かしたのでしょうか。
深田
アニメ業界をめざしたとき、まず自分の中に芽生えたものは“いつかアニメのプロモーションに関わりたい”という想いでした。アニメにハマってからは、テレビドラマのように、アニメ作品も一般化していくものになるべきだし、そういった志でアニメ作品のプロモーションに関わりたいと考えるようになったんです。
アニメ制作会社では3年間勤めていろいろな経験をさせていただいたのですが、やはり作品のプロモーションをする場所としては東京が中心になるということを痛感していました。たまたまご縁があり、転職し上京、宣伝関連の業務に就くことになりました
アニメ作品の魅力を国内だけでなく海外の人々にも伝えたい。アニメ業界をめざしたときから望んでいた宣伝業務に携わる中で、思い描く理想像がより明確になっていきました。
深田
たとえば、作品のプロモーション映像をどんなにこだわり抜いて作ったとしても、まずは触れてもらわないと始まらない。たまたま、趣味で見ていたモトブログ(バイクに乗りながら走行中の様子を撮影した映像に、トークや字幕を加えて編集した動画コンテンツ)に、気づかされたことがありました。あるタイミングから動画の視聴回数が跳ね上がっていて、そのきっかけはおそらく字幕などを付けたことによる多言語化だったんです。そこでヒントを得て、自分が制作に関わる映像には英語のみならず複数の言語で動画に字幕をつけたり、タイトルや概要欄も多言語に対応してみたら、より多くの人に作品を知ってもらう機会が増えたんです。
国内のことだけを考えるのではなくて、世界に向けた発信をしていかないといけない。海外でアニメを楽しんでいるファンのみなさんの反響を日本国内に逆輸入するということも含めて、めざすのはグローバルプロモーションだと強く思うようになりました
そして、2024年にポニーキャニオンに入社。運命が深田を導きました。
深田
通常、複数の企業が共同で製作を行うアニメの場合、海外に向けたプロモーションを展開するのにも窓口の兼ね合いなどでスムーズにいかないこともあり、そうした会社や部署間の役割分業の課題を感じていました。
そんな折に出会ったのが、当時の上司の西口さんなんです。海外にライセンスをセールスする営業部隊だけでなく、プロモーションを主体的に担うマーケティンググループが、ポニーキャニオンの海外部門の中で発足したので、そこにジョインしないかという打診はとても魅力的でした。最初に勤めたアニメ制作会社では、ほとんどの場合ポニーキャニオンが作品の宣伝窓口を担っていたので、間接的に仕事をしていましたし、社会人として初めて名刺交換をした相手の方もポニーキャニオンの方でした。僕がアニメにハマるきっかけとなったTVアニメ『けいおん!』はポニーキャニオンが音楽やビデオグラム、そして宣伝を手がけていて、しかも西口さんが宣伝プロデューサーを担当されていたんです。これはもう運命的な出会いだと思って転職を決めました
海外マーケティングに不可欠なのは情報収集とコミュニケーション
海外マーケティング部アニメグループでの業務内容は、海外プロモーションのプランニングや統括、プロモーション予算管理、ソーシャルメディア戦略、海外イベントへの参加交渉など多岐に渡ります。
深田
海外にアニメ作品を展開するには、まず海外のライセンシープラットフォームに対して作品を売り、その後にプロモーションをして、配信が開始されて、徐々にお客さんに広がっていくという流れがあります。売るということに関しては基本的にはセールスチームが担っていますが、われわれマーケティングチームもバイヤーにその作品の価値をどうやってプレゼンするかを考えて、商談に加わったりします。
アニメ作品を取り扱っていただく海外のパートナー、ライセンシーが決まれば、ライセンシーと協力しながら英語をはじめとするさまざまな言語に対応できるようなローカライズプロモーションをしていきます。また、ライセンシーに依存せず、作品主体で海外に向けたプロモーションを主に宣伝チームと一緒にしていくこともあります。そうしたライセンシングサポートと作品主体の宣伝、この2つがマーケティングチームの主な役割です。
また、プロモーションの予算管理もしていて、作品ごとに決まっている宣伝費の中でいかに海外に向けた施策案を提案し、予算を獲得するかというのも大事な仕事です
そうした仕事のなかで、もっとも必要なものは何か。深田はどう考えているのでしょうか。
深田
情報を収集しながら考え抜くこととコミュニケーション、これに尽きます。製作のプロデューサーや宣伝プロデューサーを中心にプロジェクトが動いていく中で、そこに加わって情報を収集し、海外とのやりとりをする。海外マーケティングとは、海外と作品、さまざまな役割を担う作品チームとをつなぐパイプ役なんです。
各作品ごとに進めていく制作、宣伝、各部門の担当者とのやり取りは主にオンラインミーティングですが、僕は対面会話の機会を増やすために、社内にいるときは他の本部の社員も使用できるコラボレーションエリアに座るようにしています。他部門の方とも積極的にコミュニケーションをとることで、仕事をより円滑に進められます
また、作品に対しての深い理解や愛、強い思い入れと一歩引いて俯瞰で捉える客観性。そのバランス感覚も必要だと言います。
深田
作品それぞれに打ち出したいアピールポイントがあるわけですが、ソーシャルメディア上にあふれるファンの声とか、原作に対するレビューとか、そういったリアルな情報も貪欲に集めた上でプランニング方針を決めていきます。長い間この仕事をしてきて、クリエイティブな感覚とデータに基づいたロジック、このバランスは常に大事にしています
世界が求めるものに対して海外マーケティングができること
国や文化を越えて愛されるアニメ作品の魅力を世界へ届ける海外プロモーション。どんな瞬間にやりがいを感じているのでしょうか。
深田
2025年に放送されたTVアニメ『桃源暗鬼』では、海外プロモーション担当として2024年から関わりました。グローバルプロモーションの一環で、海外各地のイベントに参加して本編上映やゲストを招いてのトークセッションを行いました。アメリカ・ロサンゼルスで行われた北米最大級のアニメコンベンション『Anime Expo』では、北米での第1話初上映に加え、メインキャストやプロデューサー、そして音楽事業本部と連携してエンディング主題歌を担当されたBAND-MAIDの小鳩ミクさんにスペシャルゲストとして登壇いただき、約2,000名キャパの会場が満席になったんです。当日は原作者の漆原侑来先生が日本からオンラインで参加してくださって、アニメ化に対する想いを語っていただきましたし、大会場を埋め尽くすお客さまの熱量を目の当たりにして、大きな喜びとやりがいを感じました。
チーム一丸となって、企画から立ち上げて、誰をゲストにして、どういった内容でイベントを作り上げるかを毎回考え抜いて提案して、社内外の方の力もお借りしながら創っていく。イベントの準備は大変でプレッシャーも大きいですが、成功させるためにできることは全部やりたいということを常に心がけて全力を尽くしています
現在は前職でのアニメ映画宣伝経験を生かして、映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』、劇場アニメ『KILLTUBE』の海外プロモーションも担当。TVアニメとは違ったスケジュールやアプローチに挑みながら、今後に向けて夢を膨らませてもいます。
深田
TVアニメはサイマル配信(同一のコンテンツを複数の異なるメディアやプラットフォームで、同時または短い時間差で公開する手法)され、日本のテレビ放送や配信と同じタイミングで海外でも展開もされるのですが、映画は基本的に日本よりも遅れて劇場公開されていきます。ただ、グローバルプロモーションの一環として、全世界的な認知・関心を高めるために日本公開よりも前に海外の映画祭で上映するなど、特有の施策もあります。その際には、映像本編の完成と各映画祭のエントリースケジュールも全部頭に叩き込んで、逆算しながら準備を進めています。
入社してから、いろいろな経験をしてきた上で今一番興味があることは、チームメンバーのベーススキルをいかに磨いて、チーム力を高めていくかということです。メンバーと話す機会を毎日のように作り、「自分たちで考えるということを大切にしてほしい」ということを折に触れ伝えています。みんな積極的で個性的ですし、英語に限らず高い言語スキルやコミュニケーション力に助けてもらうことも多いので、足りないものがあるとすれば、多種多様な経験を持つメンバーがいる中で、今まさに積んでいる経験値とそこからくる自信だけなんです。僕にできるのは、基本的に「それで大丈夫だから進めましょう」と言って自信を持ってもらえるようにすることかなと思っています。海外プロモーションをライセンシーやパートナーに依存せずに作品主体でやっていけるという強みを生かして、業界内で存在感を発揮できるチームにしていきたいです
グローバルアニメ市場が、今後どんなコンテンツを求めていくのか。深田はどう考えているのでしょうか。
深田
今ヒットしている作品を見ていると、ジャンルに限らずていねいに作られているものは日本でも海外でも一定の評価を得るということは間違いないと思っています。一般的に海外ではアクションバトル作品の人気が高いですが、最近だとポニーキャニオンが手がけるTVアニメ『違国日記』のような日常を切り取ったヒューマンドラマ的なアニメ作品にも注目が集まっています。そういった魅力ある素晴らしい作品を世界に広めるために、自分たち海外マーケティングチームもよりいっそう知恵を絞っていきたいです
※ 記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります
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