エンターテイメントは人と人、世界をつなぐ

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アニメ・映像メディアマーケティング部 海外グループにて、劇場アニメなどの海外セールス、海外映画祭出品のため日々奔走する蕎麦谷 卓馬。帰国子女であり、幼いころから映画や音楽を愛してきた彼の歩みを紐解いてみれば、そこには国境をも越えた数々のドラマがありました。

ファンクバンドでデビューを目指すも挫折、就職することに

▼海外グループの蕎麦谷 卓馬。残暑厳しい中、爽やかな表情をパシャリ
▼海外グループの蕎麦谷 卓馬。残暑厳しい中、爽やかな表情をパシャリ

ビジネスの場でも通用する英語力と、エンターテイメントへの尽きない好奇心を持つ蕎麦谷。彼の原点は、幼少期を過ごしたアメリカにあります。

蕎麦谷

親の仕事の都合で小学生のころに4年半、アメリカで暮らしていたので、英語は自然としゃべれるようになりました。アメリカに住んでいるとどこに行くにもだいたいは車移動になるわけですけど、両親が大のビートルズファンで、カーステレオからいつでもビートルズの曲が流れていて。よく一緒に口ずさんでいた記憶があります。ちなみに、自分で初めて買ったカセットテープはアメリカの女性バンド・バングルス。僕にとってのアイドルでした

英語と音楽を浴び多くを吸収したアメリカ生活ののち、日本に帰国したのは中学生のころ。やがてバンド活動にのめり込んでいきます。

蕎麦谷

日本に戻ってきてからは、ハードロック、ヘヴィメタルに目覚めてバンドを組んで、中学・高校時代はギターを担当していました。大学時代は、恥ずかしながら自分の名前をもじった“そバンド”という名のファンクバンドを結成してボーカルを担当。ライブ活動をしながらいろいろなレコード会社にデモテープを送り、一時はメジャーデビューを目指したんですよ。でも、そんなに世の中甘くないですからね(笑)。自分は音楽で食べていくことはできないなと諦めて就職活動をしました

就職活動を経て入社したのは、大手玩具メーカー。1年目はアパレル部、2年目はメディア部に配属され、経験を積むことになります。

蕎麦谷

アパレル部での自分の役割は、いろいろな店舗に出向いてどんな商品が売れているのかをヒアリングする市場調査。世の中のニーズに合った商品はなんなのかを把握して、どうすればもっと売れるようになるのかを考える、それが企業にとってどれだけ大事なことなのかを知ることができました。

2年目に配属されたメディア部では、映像制作に携わることになりまして。というのも、実は大学時代にゼミで脚本を書いて映画を撮っていたんです。ちょうどそのころブームになっていたウォン・カーウァイ監督(スタイリッシュな世界観と映像美で魅了してきた香港の名匠)の作品や、『ベルリン・天使の詩』みたいなミニシアター作品に影響を受けて、『愛の亡霊』というタイトルの男性の悲恋を描いた作品だったんですけど。

今振り返ると、ちょっと気恥ずかしさもありますね(笑)。でも、そういう学生時代の経験を映像制作の仕事に多少なりとも生かせたのではないかなと思います

一念発起して大手玩具メーカーから転職、憧れのエンタメ業界へ

▼新天地で目まぐるしい日々を過ごしていた蕎麦谷。そんな中での原動力はライブや劇場で見るお客さんの笑顔でした
▼新天地で目まぐるしい日々を過ごしていた蕎麦谷。そんな中での原動力はライブや劇場で見るお客さんの笑顔でした

玩具メーカーに2年半ほど務めた蕎麦谷でしたが、“やはり自分の好きな音楽や映画により深く関わる仕事をしたい”という想いを日に日に募らせていきます。その矢先、たまたま目にしたのがポニーキャニオンの求人情報でした。

蕎麦谷

ポニーキャニオンの中途採用情報を見かけて応募したら、アーティストの発掘から制作進行、宣伝、プランニングまでを担当するFLIGHT A&Rのアシスタントとして採用されたんです。レコーディングやミュージックビデオ撮影、テレビやラジオなどメディア出演、ライブやイベント、キャンペーンなど、担当するアーティストに同行してあらゆる現場に立ち会うのがアシスタントの仕事です。

思っていた以上に目まぐるしい日々でしたが、アーティストや事務所の方に対してどう接するべきか、さまざまな現場でどう立ち振る舞うべきかといった心得、音楽業界の用語やルールなど、半年ほどの短い期間ではあったものの、みっちり学ぶことができました。

また、お客さんの笑顔を直接見ることができるライブやイベント、キャンペーンでは人の喜びに直結する仕事に携われているんだということを実感できて、その想いは今も仕事をする上での原動力になっています

半年ほどで異動した先は、映画部。入社時に「音楽か映画の部署に」と志望していた蕎麦谷、早々に願いがどちらも叶うことになりました。

蕎麦谷

映画部では、洋画の買い付けや洋画ビデオのリリースなどの仕事に携わりました。カナダのトロント国際映画祭にいきなりひとりで送り込まれることになって最初は不安だったんですけど、当時アメリカ在住だった先輩社員と共に、その場で観て感銘を受けた作品を買い付けました。頼もしい先輩のおかげもあり、気負うことなく大役を果たすことができました。

ちなみに、そのトロント国際映画祭で買い付けたのは実話を基にした山岳映画『運命を分けたザイル』。劇場公開初日に行列ができたときにはすごく感動しました。『フェスティバル・エクスプレス』という担当した映画も思い出深いですね。1970年の夏にジャニス・ジョプリン、ザ・バンド、グレイトフル・デッドといった当時のアメリカのトップアーティストたちがカナダ各地を列車でサーキットしたフェスティバルツアーの模様を収めたドキュメンタリーです。長いことお蔵入りになっていた貴重な映像作品でしたから、これもまた公開初日に行列ができました。

配給会社の担当者が発案した、黄色と赤のカラフルなデザインを施したポスターやチラシの宣伝も功を奏したのか、中高年のコアなロックファンだけでなく、若年層も呼び込むことができてスマッシュヒットしたんです。発想次第でターゲット層を広げられるんだという気づきがそこにありました

“韓流元年”に巻き起こした韓国歴史ドラマ旋風

▼『朱蒙(チュモン)』を始めとする韓流ドラマにまつわる思い出を振り返りながら語ってくれました
▼『朱蒙(チュモン)』を始めとする韓流ドラマにまつわる思い出を振り返りながら語ってくれました

“当たり前”にとらわれない宣伝手法を学んだ映画部での3年を経て、蕎麦谷は今も続く韓流ブームの火付け役となった韓流テレビドラマの買い付けを担当することになります。

蕎麦谷

ドラマ『冬のソナタ』や、その主演俳優であるペ・ヨンジュンはじめチャン・ドンゴン、イ・ビョンホン、ウォンビンといった初代韓流四天王が大ブームとなっていた、そのさなかに異動しました。多くの作品群の中からこれだと思うドラマを買い付けて、テレビ放送をしてもらえるように国内のテレビ局と交渉して、その作品が自社からビデオ発売される際には出演者をリリースイベントに招く段取りをつける。それが大まかな仕事の流れです。

中でも忘れられないのは、『朱蒙(チュモン)』。韓国で最高視聴率52.67%という驚異の視聴率を記録した大ヒット史劇です。当初60話だったものが人気を受けて本国で81話になり、そのぶん買い付け金額も上がってしまうから社内稟議を通すのは簡単ではなかったんですけど、“これはヒットするだろう”と確信したので会社を説得したんです。前例がまだあまりない中で、契約書を交わすにしても映像・音声のチェックをするにしても、当時は本当にいろいろ苦労しました(笑)。でも、その甲斐あって放送が始まるとすぐに話題を呼び、ビデオリリースも決まりました。

ビデオリリースにあたっては『朱蒙(チュモン)』のロケ地取材を行ったんですが、今振り返るとかなりサバイバルな体験でした。というのも、ロケ地となったのは郊外にある時代劇のテーマパークのような場所で、周りになにもないんです。予定が組めない中、そこでただひたすら空き時間ができるのを待って、主演のソン・イルグクの取材をさせてもらおうと。宣伝部の働きかけで『朱蒙(チュモン)』を取り上げてもらえた日本の新聞記事も後押しとなり、なんとか取材時間が確保できたときには、もうガッツポーズをしました(笑)

新たな試みに挑む中で、今では当たり前となった日本での韓国歴史ドラマ放送だけでなく、韓流スターの来日も実現させました。

蕎麦谷

日本でのプロモーション時には、韓流スターの来日交渉から来日時の空港警備、広報PR活動など越えなくてはならないハードルがいくつもあって、なかなか大変でした。でも、空港に詰めかけた1000人ほどのファンの方たちが歓喜してタレントを出迎える姿を見て、“本当によかった!”って心から思いました

ハリウッドスターの来日対応や国際映画祭での受賞……まさかは起きる!

▼フランス・カンヌ映画祭でのレッドカーペットにて記念撮影。「初めてのことだったので緊張しました」
▼フランス・カンヌ映画祭でのレッドカーペットにて記念撮影。「初めてのことだったので緊張しました」

5年ほど韓流ドラマに関わった蕎麦谷は、アニメ制作や国内映像作品の宣伝アシスタント業務にそれぞれ約半年ずつ携わったのち、アニメ・映像メディアマーケティング部の配給グループへ。『ジョン・ウィック』シリーズ(4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』公開中)で主演を務めるキアヌ・リーブスなどハリウッドスターが来日する際には、日程調整やアテンドを行いました。

蕎麦谷

数々の“いい人伝説”を持つキアヌ・リーブスは、本当に気さくなナイスガイです。昔から出演作を観ていたハリウッドスターと仕事をすることになるなんて、自分でも驚きます

その後、同じ部内で海外グループに異動してから現在に至るまで、自社が手がけるアニメ作品や実写映画のセールス、海外の映画祭への出品・応募などが蕎麦谷の主な業務です。2023年6月劇場公開のアニメ『夏へのトンネル、さよならの出口』は、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭でポール・グリモー賞を受賞するという栄誉に輝きました。

蕎麦谷

アヌシー国際アニメーション映画祭はいわばアニメのカンヌ国際映画祭で、2023年新設のポール・グリモー賞は監督賞にあたります。アヌシー国際アニメーション映画祭で日本のアニメ作品が長編部門で受賞するのは『夜明け告げるルーのうた』『この世界の片隅に』以来6年ぶりのことで、作品名が呼ばれたとき、監督はじめチーム全員が一瞬キョトンとしてしまいました(笑)。

もちろん、自信を持って世に送り出した作品ではあるんですけど、世界各国から素晴らしい作品が集まる映画祭ですからね。まさか賞をいただけるとは!という驚きと喜びが、あとから一気に押し寄せてきました。

実写ももちろんですが、クリエイターの想いや技術が詰まったアニメの1コマ1コマが大事なもの。たくさんの人の熱意と努力が結実した作品をひとりでも多くの人に知ってもらって、日本だけでなく世界でも認められるというのは本当に誇らしいことです。

『夏へのトンネル、さよならの出口』は、2023年9月14日から韓国でも上映され、9月29日からAmazon Prime Videoでの見放題独占配信も決定しました。そうやって関わるさまざまな作品が大きく世界に羽ばたけるように僕も真摯に向き合わないといけないなとあらためて思っています

海外グループに在籍6年目となる現在、海外国籍の後輩を2人持つ蕎麦谷は、後進の育成にも力を入れたいと考えています。

蕎麦谷

日本は杓子定規なところもあるけどなんでもきちんとしている、海外は大雑把なところもあるけど融通が利く。そういう常識や慣習、文化の違いを知ったうえで、日本と海外の橋渡しを上手にできるのがこれからの世代だと思うし、海外販売のノウハウもどんどん吸収している2人には期待しています。

それから、“好きなことがあるんだったら諦めないほうがいい”ということを若い世代に伝えたいですね。僕自身、夢を追って転職したから今があるわけだし。新卒以外にも第二新卒や中途採用とか、好きな世界に飛び込む道はひとつではないですよね。語学力はあるに越したことはないですが、それ以上に必要なのはどんな相手、状況でも臆することない自己アピール力と、柔軟に対応できるコミュニケーション能力。自分を信じてどんどん挑戦してほしいです

トレンドが目まぐるしく移り変わる中で、エンターテイメント業界に長く身を置いてきた蕎麦谷。彼が今思うのは、どんなことなのでしょうか。

蕎麦谷

大変なこと、ひと筋縄ではいかないことも多々ありますけど、エンタメ業界の仕事はやっぱり楽しいですよ。経験を重ねてますますそう思うし、好きなことを仕事にできるというのは本当に幸せなことです。そして、国同士で文化的に共感・共有してつながることができますから。この先も日本と海外を結ぶエンタメに関わっていきたいですね

※記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります。
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