海外マーケティングの最前線で、日本のアニメと世界のプラットフォームの“架け橋”に

海外マーケティングの最前線で、日本のアニメと世界のプラットフォームの“架け橋”に

ポニーキャニオンの海外マーケティング部で、アニメ作品を配信プラットフォームなどに番組販売する、セールスチームのリーダーを務める蒋 文博(ジャン ウェンボ)。生まれ育った中国で日本のアニメに出会い、日本の大学院で社会学を学び、アジア市場に向けたライセンシー業務を経て転職。これまでの歩みをたどりつつ、好きなアニメを世界に広める仕事の醍醐味を語ってもらいました。

日本のアニメを見て育った子ども時代が原点に

▲海外マーケティング部アニメグループの蒋 文博。日本のアニメにハマって以来、フィギュアやグッズも自然と増えていきました
▲海外マーケティング部アニメグループの蒋 文博。日本のアニメにハマって以来、フィギュアやグッズも自然と増えていきました

私は中国出身なのですが、学生時代から日本のアニメが好きでした。少年マンガ原作の王道作品はもちろん、高校生くらいから深夜アニメも観るようになり、ちょっと反抗期もあったので(笑)、ダークな作品にも幅広く触れていました。私の世代は、テレビでも日本のアニメがたくさん放送されていたので、その影響はとても大きかったです

ヒーローが勝つ物語だけではなく、葛藤や喪失を描く作品にも心を動かされるようになり、その体験は後に作品を多角的に評価する視点へとつながっていきます。さらに日本に興味を持った彼女は、中国の大学で日本語を学び、日本文化の知見を深めるため、日本の大学院に進学し、社会学を専攻します。エンタメの研究ではありませんでしたが、そこで現在の仕事にも直結する貴重な経験を積みました。

大学院では地域政策を研究していて、フィールドワークが中心でした。たくさんの方と直接お話しして、“どう考えているのか”“どう感じているのか”を聞くインタビューもたくさんやりました。また、日本に実際に住んでみて、日本の生活や文化がどういうものかを、少しずつですが深めていくことができました

相手の立場や価値観を理解しようとする姿勢は、国や文化をまたぐビジネスにおいて欠かせない力です。学生時代の積み重ねは、まさに今の仕事の土台になっています。就職活動についても、印象的なエピソードがあります。

仕事をするなら、好きなことに携わりたいと思ったんです。私は好きなアニメのフィギュアをたくさん持っていたので、じゃあそのフィギュアのメーカーで働いてみるのはどうだろうと調べたのが、最初の就職活動でした

海外ライセンシーと積み重ねた信頼が財産になる

フィギュアメーカーでキャリアをスタートさせた後、さらなるキャリアを積むために大手エンターテインメント企業へと転職します。どちらの会社でも、海外ライセンス業務を手掛けました。とくに前職では、アジア担当として海外ライセンス営業とプロモーションを兼任していました。海外営業というと日本でヒットした作品だけを扱う印象がありますが、実際はそうではありません。

前職では中国・韓国・東南アジア地域を担当していたんですが、基本的には年間40〜50作品ほどに携わっていました。日本でも大ヒットしたビッグタイトルだけでなく、まだ知名度の低いものも含めて全部に向き合っていたので、経験はたくさん積めました

多くの作品を横断的に理解し、それぞれに合った展開やプロモーションを見極めていく経験は判断力を磨きました。そして今も大切にしているのが、契約相手との関係性です。

文化の違う国への営業やプロモーションを行うためには、やはり難しさはあります。ライセンシーと一緒にさまざまな出来事を乗り越えていくことで、関係性が強くなっていくため、たくさんのパートナーと“顔が見える関係”を築けたことは、今も大きな財産になっています

数字だけでは測れない信頼の蓄積。それが、次なる挑戦を支える力になります。そして、2024年にポニーキャニオンへ転職しました。数あるエンタメ企業の中からポニーキャニオンを選んだのは、海外戦略にしっかり目を向けた組織構造に惹かれたからでした。

前職までは、セールスとプロモーションを両方やっていましたが、ポニーキャニオンは“海外セールス”と“海外プロモーション”と部門が分かれていて、そこが特徴的だなと思いました。セールスとプロモーションが分業されていれば、それぞれの専門性を深められるので、その強みに惹かれました。また、アニメ作品もたくさん手掛けているので、ますますやりがいを感じました

ポニーキャニオン入社後はまず、欧米担当としてマーケティング窓口を経験します。

正直、最初は苦手意識がありました。英語は日本語や中国語ほど自信があるわけではないですし、アジアと欧米では、中国と日本以上に文化的な違いも大きいです。でも半年、1年と続けるうちに、アジア地域との共通点も見えてくるし、違いも理解できるようになりました。新しい挑戦ができて、本当に楽しいです

アジアから欧米へ。グローバルという新しい挑戦の舞台

現在は、セールスチームのチームリーダーとして、番組ライセンスセールスを中心に、アジア・欧米・グローバルプラットフォームを横断する役割を担っています。ひと言でいえば“海外にアニメ作品を販売する仕事”ですが、その中身は想像以上に多層的です。営業、パブリシティ連携、素材管理、社内調整、文化的リスク判断、そしてチームマネジメント、すべてを同時進行で行っています。その中でも特筆すべきなのは、営業タイミングの早さです。

取引先は主にグローバルな大手プラットフォームで、基本的には、こちらから営業をかけることが多いです。これから制作されるアニメ作品の資料を作って各社に案内しますが、グローバル展開をする作品の場合は、何年も前から動くこともあります。まだ映像がない段階なので、企画を説明して『絶対いい作品になります!』とプレゼンをします。この分野は競争がとても激しいので、できるだけ先にアピールしないと可能性を逃してしまうんです

とくにグローバル配信の場合は、音声の吹き替えや字幕制作にも時間がかかり、音声の仕様や画質フォーマットなどテクニカル面にも高品質が求められます。日本国内の制作スケジュールと、グローバル向けに作品素材を提供するスケジュールを、いかにうまく調整していくかも大切です。そのために彼女のチームがハブとなり、部内ではマーケティングチーム、商品化チームなどの別部署とも密に連携。部外でも製作プロデューサーや宣伝プランニング部と連動し、海外セールスの拡充を推進しています。また、世界各地域に寄り添った文化的配慮の重要性も高まっています。

文化的な違いに寄り添うことも、海外セールスにはとても大切です。日本では問題にならない描写でも、海外では議論を呼ぶ可能性もあるので、制作段階から『このシーンは海外で大丈夫ですか?』と相談されることもありますし、こちらからこういう表現にしてはどうかと提案することもあります

海外展開は、単なる“コンテンツを販売する”にとどまらず、設計段階からの協働も大切になってきています。

最近は社内でも、最初からグローバルな視点での展開の話が増えてきました。海外での日本アニメの人気は高いので、アニメイベントへのクリエイターや声優の出演も大事ですし、映画祭への出展や商品化の展開にも、目を配らなくてはなりません。それを成功させるためにも、私たちは頑張らなくてはならない。ライセンシーも人間ですから、最後は私たちの熱量が、“この作品に懸けてみよう!”という決断を引き出すのだと思っています

作品を世界に届ける喜びと、これからの夢

▲シンガポールで開催されたコンテンツ見本市『Asia TV Forum & Market』に出展のため参加。同じチームの柴 媛敏(サイ エンビン)と記念撮影
▲シンガポールで開催されたコンテンツ見本市『Asia TV Forum & Market』に出展のため参加。同じチームの柴 媛敏(サイ エンビン)と記念撮影

長い準備期間を経て、作品が世界に飛び出したとき、その結果がどう出るかは常に気になるところです。そして、そこにこそ海外セールスの醍醐味とやりがいを感じると言います。

セールスチームのみんなも同じだと思いますが、自分が“これは絶対いける!”と営業した作品が、実際にいい成績を出したときは本当に嬉しいです。それが次の信頼にもつながって、『ポニーキャニオンが推す作品なら!』と言っていただけるようになります。最近も、異世界ファンタジーの『貴族転生 ~恵まれた生まれから最強の力を得る~』は、欧米の配信プラットフォームでトップ10入りをしましたし、『https://tougenanki-anime.com/#/』も好評でした。日本の少年マンガ的なバトルもの、異世界もの、ファンタジーものは特に海外人気が高いです

未来を信じた提案が、実際の成果につながる。その喜びが次の挑戦への原動力になるのです。そんな彼女は、今後の展望についても具体的な視野を持っています。

ポニーキャニオンは音楽事業も展開しているので、音楽という強みを生かして、海外でも音楽とアニメを連動させることで、相乗効果を出したいです。そこは、ずっと考えています

もうひとつ、世界市場を相手に活躍しているからこその野望があります。それが、海外のトレンドを日本のアニメ制作へとフィードバックすることです。

ヒットしているアニメは、ほとんどが原作ものです。今は国内のマンガやライトノベルをアニメ化していますが、海外にもいい小説やマンガがたくさんあります。アジアでも欧米でも、海外で今何が流行っているかはSNSでもすぐにキャッチできるので、それを精査して、日本でアニメ化できないか?と私たちから制作側に提案していきたいです。それが実現すれば、ポニーキャニオンはより海外マーケットに強くなれると思います

販売だけでなく、提案する立場へ。市場を知るからこそ見えるものが、そこにあります。“好き”から始まった蒋のキャリアは、今や世界と作品をつなぐ役割へと広がっています。これからも文化と文化を結びつけながら、アニメ業界での新しい可能性を丁寧に紡いでいきます。

※ 記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります

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