心揺さぶる劇場アニメ『ひゃくえむ。』を支える、プロジェクトメンバーの情熱

心揺さぶる劇場アニメ『ひゃくえむ。』を支える、プロジェクトメンバーの情熱

2025年9月19日より公開中の劇場アニメ『 ひゃくえむ。 』。100メートル走に魅せられ、10秒という一瞬の輝きに人生をかける者の栄光と挫折、情熱と狂気を描いた本作は、公開からおよそ2カ月強で50万人超の観客を動員、興行収入7.5億円超を記録。幅広い客層とあわせて多くのリピーターを生むと同時に、第98回アカデミー賞長編アニメ映画賞の審査対象作品に選ばれるなど、大きな話題を呼ぶ作品となります。製作委員会、音楽制作、主題歌アーティスト・ Official髭男dism の宣伝、配給営業と、各チームのアシスタントとして作品に関わり、多くを学んだプロジェクトメンバーの言葉から、関わる人々が心血を注ぎ熱量高く向き合った『ひゃくえむ。』の成り立ちや魅力、可能性を探ります。

▲写真左から、島田 彩未、寺田 佳輔、佐藤 かなこ、石川 珠有
▲写真左から、島田 彩未、寺田 佳輔、佐藤 かなこ、石川 珠有

垣根を超え、スピード感重視で各部署が臨んだ『ひゃくえむ。』

――まずは、みなさんの所属部署と、劇場アニメ『ひゃくえむ。』でどんな業務を担当されたかを教えていただけますでしょうか。

寺田

アニメ・映像事業本部 映像プロデュース部1グループの寺田 佳輔です(本作のクレジット表記上は寺田ケニー)。本プロジェクトは2021年からスタートしていますが、僕は2025年1月にライブ制作の部署から異動しまして、『ひゃくえむ。』には途中から関わることになり、主に製作委員会まわりの業務をやらせていただきました。

佐藤

アニメ・映像事業本部 映像プロデュース部2グループの佐藤 かなこです。私は音楽制作のアシスタントとして2025年3月ごろから『ひゃくえむ。』のプロジェクトに入りました。劇伴のレコーディングに立ち会ったり、サウンドトラックCDや音楽配信の企画をしたり、音楽制作まわりの提案をする業務をしておりました。

石川

音楽事業本部 A&R 1部1グループ IRORI Recordsの石川 珠有です。現在はOfficial髭男dism(以下 ヒゲダン)の宣伝を担当しております。ヒゲダンが主題歌「らしさ」を担当した『ひゃくえむ。』では主題歌チームとして、映画と楽曲のコラボやキャンペーンといったプロモーションの提案と進行を担当しておりました。

島田

アニメ・映像マーケティング本部 国内マーケティング部 配給グループの島田 彩未です。配給グループは映画館での上映を調整したり劇場内宣伝などを行っておりまして、新入社員で5月から配属された私は、劇場ページの更新のほか、ポスター、チラシ、ムビチケカードの特典や入場者プレゼントの発送、イベント上映などのアシスタント業務を担当しました。

▲アニメ・映像事業本部 映像プロデュース部1グループの寺田 佳輔
▲アニメ・映像事業本部 映像プロデュース部1グループの寺田 佳輔

寺田

週に1回の定例打ち合わせで各セクションの進捗を確認しつつ、スピード感重視で各部署に作業していただけたなと思います。上映劇場のブッキングや上映回数の調整、島田さんが言ってくれていた入場者プレゼントなど配給チームの尽力も功を奏して、まだまだ高みをめざしていける作品だなと感じていたりもします。

佐藤

私は劇伴制作のほか、製作委員会と主題歌チームとの調整役みたいなこともやらせていただいたので、石川さんとは原作者である魚豊先生とヒゲダンの藤原 聡さんの対談企画や、映画と主題歌「らしさ」のコラボMVに関してどういった内容にするかを相談するなど、わりと接点がありましたよね。

石川

そうですね。部署が違うので普段はあまり接点がないんですが、垣根を越えて力を合わせることもできました。

島田

私はみなさんに比べてまだ社歴が浅く、石川さんとはこの座談会が初めましての場だったりもするんですが、『ひゃくえむ。』で委員会方式というものを初めて経験する中で、社内の他部署の方、他社の方と協働する大切さを学びました。

佐藤

確かにそれはありますよね。『ひゃくえむ。』を通して社内のコミュニティが広がったので、それも個人的に嬉しかったです。

▲アニメ・映像事業本部 映像プロデュース部2グループの佐藤 かなこ
▲アニメ・映像事業本部 映像プロデュース部2グループの佐藤 かなこ

作品のストイックさや熱量がプロジェクトメンバーに伝播

――『ひゃくえむ。』での担当業務に関して思い出深いこと、心に残っているエピソードをお聞かせください。

島田

思い出深いのは、入場者プレゼントが元々の計画よりも追加されていったことです。第1週と第2週は原作者・魚豊先生の描き下ろし色紙風カード、第3週はキャラクター名セリフ6カットステッカーと第3弾まで作ることになっていたのですが、11月中旬の現在では第10弾の特製描き下ろしビジュアルポストカードをお配りしています。それだけ劇場に足を運んでくださる方、入場者プレゼントを楽しみにしてくれている方がたくさんいるというのは本当にありがたいことですし、微力であるものの自分の関わっている仕事が作品に貢献しているのかなと感じられて嬉しかったです。

公開1週目に両親を連れて劇場に足を運んだのですが、そのときもらった入場者プレゼントは家に飾っています。

▲後ろ姿ですがアニメ・映像マーケティング本部 国内マーケティング部 配給グループの島田 彩未
▲後ろ姿ですがアニメ・映像マーケティング本部 国内マーケティング部 配給グループの島田 彩未

佐藤

それは宝物ですね!私はこのプロジェクトに入る前、本作プロデューサーで、映像プロデュース部1グループの寺田 悠輔さんに『ひゃくえむ。』のメインテーマ「100 meters」のデモ音源を聴かせていただいたんですけど、その時点で曲が素晴らしすぎてワクワクしたんですね。その後、縁あってグループの垣根を越えて私も『ひゃくえむ。』の音楽制作に携われることになりまして。それがまず嬉しかったことで、その後の劇伴レコーディングもすごく印象的です。『ひゃくえむ。』の劇伴にはいろいろなミュージシャンの方が参加されていて、曲によってギターにしろドラムにしろ演奏者が違ったりするんですが、堤 博明さんが手がける楽曲とミュージシャンそれぞれの個性が素晴らしく融合されているなということをレコーディングですごく感じました。

石川

私はふたつありまして、ひとつは『ひゃくえむ。』のエンドロールで「らしさ」が流れたときです。 公開前の試写で、『ひゃくえむ。』の主人公2人と同じように映画と楽曲がいい意味で競い合っているように感じて、自分や他者と競いながら進んでいく両作品そのものだなと心が震えました。他にも魚豊先生と藤原さんが対談させていただいたり、映画と主題歌「らしさ」のコラボMVを公開できたり、両作品の相乗効果で、それぞれの魅力をしっかり届けられたなと感じたときは、すごく嬉しかったです。

音楽事業本部 A&R 1部1グループ IRORI Recordsの石川 珠有
音楽事業本部 A&R 1部1グループ IRORI Recordsの石川 珠有

寺田

僕は前部署ではコンサート制作を担当していて、今回人生で初めてアニメ作品に関わったのですが、学ぶことが本当に多かったです。中でも、メインビジュアルのポスター制作は思い出深いですね。製作委員会のポニーキャニオン、TBSさん、アスミック・エースさん含め各社でキャッチコピー案を出して、打ち合わせをして候補を絞り、実際にデザインに落とし込んで岩井澤 健治監督に提案をして、そこからまた監督の案もいただきながら細かく精査していって。“この距離に刻め。”というキャッチコピーにたどり着くまで数ヵ月を要しました。その結果、100メートルという距離に人生を刻むという作品のストイックさとか熱量、キャラクターの人生を感じられる、短いながらもメッセージ力のある言葉になったと思います。

あと、『ひゃくえむ。』では実写映像の上から絵を描いてアニメーションを作る「ロトスコープ」という手法を用いているのですが、僕が撮影した競技場の外観とか客席が描き起こされているんです。実際に自分がカメラで撮った映像がアニメーションになってスクリーンで観られるという、『ひゃくえむ。』でしか味わえない体験ができたことも思い出深いです。

誰かに届く。人の心を動かす。それが仕事のやりがい

――『ひゃくえむ。』での担当業務を通して、それぞれにやりがいを感じた瞬間もあったことと思います。

佐藤

本作では、登壇者へ質問ができるティーチイン付き上映会を何度か実施していまして、その中で自身が感じている劇伴の魅力を言語化してくださるお客さんもいたんです。小学生のトガシと小宮が河川敷で走るシーンでファーストサインがかかるときなのですが、電車の音からどう滑らかに曲に移行するかを、堤さんや音楽ディレクターの池田 貴博さん、プロデューサーの寺田さんでとことん試行錯誤したのも知っていたので、それに気づいて触れてくださった方がいたのがすごく嬉しくて。自分が関わった音楽がちゃんとお客さんに届いているんだなと感じたそのときが、一番やりがいを感じました。

島田

来場者プレゼントもそうですし、イベント上映もかなり回数が重なって準備が大変だったのですが、佐藤さんも言っていたようにお客さんの反応や熱量を肌で感じられる場は、私も佐藤さんと同じくやりがいを感じます。「何回も観に行ったよ」「またイベントやってほしい!」という反応をいただけると、自分がやっている仕事が人に届いているんだな、誰かに届けるための仕事なんだなと感じて嬉しくなります。

石川

その気持ち、わかります。8月に開催された『SUMMER SONIC 2025』でヒゲダンが「らしさ」を初披露したときの衝撃と感動はすごく大きかったし、その後の各地の夏フェスでも毎回披露していたんですが、回を追うごとに元々あった曲の力がどんどん増していくのを目の当たりにして。お客さんにちゃんと届いていること、お客さんが「らしさ」を愛してくれていることがすごく実感できたんです。お客さんに届いてこそ、お客さんと共有してこそ曲は強く育っていくものなんだなということをあらためて感じた夏でした。各地で盛り上がってくれたお客さんにも、ライブ会場に来られなくとも繰り返し「らしさ」を聴いてくれたみなさんにも、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

寺田

自分の携わった作品がお客さんの手元に届いたり、観たり聴いたりしていただいた瞬間がこの仕事の一番のやりがいだと僕もやっぱり思います。映画の本編を観ていただいた方はもちろんなんですけど、入場者特典のアイテムだったり、劇場で販売するグッズやパンフレット、予告編にしても、大切に持っていただいていたり、何度も観ていただいたり、本当にありがたいし嬉しいんです。佐藤さんのチームで担当している劇伴の1曲目、映画のメインテーマである「100 meters」を使った特報映像は『ひゃくえむ。』が最初に世の中に出た素材で自分も大好きなのですが、たくさんの方に反応していただけた感動は忘れられないですね。みなさんに届いているんだと感じられる瞬間は、エンタメの仕事をしていて一番の醍醐味ですね。

社内外の“天才”との関わりを通して得たもの

――『ひゃくえむ。』は原作者の魚豊先生はじめ各方面の類稀なる才を持つ方が集まって生まれた作品ですが、それぞれに仕事を通じて刺激を受けた方も社内外にいたのではないでしょうか。

寺田

僕は、アニメーション制作をしていただいたロックンロール・マウンテンさんと一緒にお仕事できたことが一番良かったと思っています。実際にロックンロール・マウンテンさんのオフィスに行き、制作の過程をいろいろ拝見させていただいたんです。劇中に、草木が生い茂る道を自転車を漕いで進んでいく小宮のうしろ姿をとらえる美しいシーンがあるのですが、手描きで丁寧に描かれた背景がたくさんのレイヤーで重なって、葉っぱ1枚1枚の動きまで緻密に表現していて。何気なく思えるひと場面だけをとっても、たくさんの方々が参加して力を注いだ作品を世に届けるため、微力ながら仕事をさせてもらえたことは自分にとってかけがえのない経験になりました。

石川

私は、「らしさ」に限らずヒゲダンの音選びや歌詞は本当にすごいなと毎回感動しています。難しい言葉ではなく多くの人に伝わる言葉を使いながら、その中にちゃんと複雑性や心の機微があって、どんな人生の岐路に立つ人も共感できる部分があるんですよね。そういう唯一無二のヒゲダンの素晴らしさを、「らしさ」であらためて感じました。あと、『ひゃくえむ。』という作品そのものにも同じ感動があったんです。魚豊先生と藤原さんの対談でお2人がおっしゃっていたように、映画と楽曲がしっかり共鳴し合っていて。そういうすてきな作品に関われたことは、私の今後のキャリアにとっても貴重な財産になると思います。

佐藤

私が主に関わらせていただいたのは先にお話しした音楽の堤 博明さんと音楽ディレクターの池田 貴博さんだったのですが、堤さんの作る曲の緻密さは本当に天才的だし、池田さんのアイデアはとても豊かで、お2人がすごくいいバランスで音楽制作をしていることも感じたんです。サウンドトラックCDには、堤さんが1曲1曲の生まれた背景や楽曲制作の意図を綴ったライナーノーツが付いていて、その的確な言語化能力にも感嘆してしまいます。感覚的な閃きとロジカルな思考の融合で生まれた『ひゃくえむ。』を彩る劇伴音楽、ぜひたくさんの方に聴いていただきたいし、サントラCDのライナーノーツにも目を通していただきたいです。

島田

配給グループはひとつの作品に全員が関わるんです。ひとりひとりの頑張りがあった上で、メンバーみんなで密にコミュニケーションを取りながら進めていく。そういう共同作業を通して生まれるパワーや一体感のすごさをあらためて感じました。自分としては初めてプロデューサーの方とちゃんと関わった今回、たくさんの人とともに作品をまとめていく力が、寺田 悠輔さんはやっぱりすごいなと思いました。私はもともと洋画が好きで邦画に関しては知識が浅いですが、企画を立ち上げて作品を作り、世に送り出していく邦画制作のおもしろさを知り、邦画制作にまた関わってみたいと思えたことも個人的に大きな変化です。

多くの人の共感を呼ぶ『ひゃくえむ。』は、まだまだ広がっていく

――それぞれの立場から見える『ひゃくえむ。』の魅力も教えていただけますでしょうか。

寺田

学生時代はバスケに打ち込んでいたのでスポーツにかける熱い気持ちは理解していましたが、陸上競技において花形に思える100メートル走の儚さや残酷な部分は『ひゃくえむ。』を通して初めて知りました。バスケのようなチームスポーツと違って、ひとりで何年も努力してきた結果が10秒という一瞬で決まる、個人競技の希望と絶望がリアルに描かれています。魚豊先生による原作、ボイスキャストの方々の熱演、ロックンロール・マウンテンさんの作ったアニメーション映像、ヒゲダンの主題歌や劇伴といった音楽など、すべてが本当に素晴らしい作品です。

佐藤

魚豊先生と藤原さんの対談で、藤原さんには藤原さんの『ひゃくえむ。』があるんだと感じましたし、私自身、昔打ち込んでいたことや今向き合っていることが作品に重なって、すごく共感するシーンがたくさんあったんです。『ひゃくえむ。』は、スポーツではなくても何かひとつでも頑張ったことや一生懸命に何かに取り組んだことがある人にとっては、それに置き換えて共感できるところがたくさんある作品だと思いますし、そこが多くの方を惹きつける魅力なんだろうなと感じています。

石川

私は、『ひゃくえむ。』も「らしさ」もどちらも人間賛歌のように感じています。誰しも強さだけじゃなくて弱さも自分の中にあって、「らしさ」の歌詞にもあるように泣いたり笑ったり、相反するものが常に自分の中で競い合っているというところが、何かを一生懸命頑張っている人とか、めざしている人にとってのアイデンティティーだし“らしさ”なんだと思いました。そういった自分自身と向き合うきっかけになることも、両作品の魅力だと思います。

島田

私はスポーツをやっていたので、レース前の緊張感が伝わってくるシーンがとても好きです。一番緊張が高まる試合開始の合図が鳴る前の瞬間、その静寂があまりにもリアルで、一緒に緊張してしまうほどの没入感があって。何かに打ち込んでいる人に特に刺さるだろうし、もっと何かに打ち込みたくなるような魅力もある作品だと思います。

――10月にはアメリカや韓国・台湾などでも劇場公開され、12月31日からはNetflixでの世界独占配信が決定するなど、国内のみならず国外にも広まりを見せている『ひゃくえむ。』ですが、それぞれの立場から今後の展望もお聞きしておきたいです。

島田

公開から少し時間が経ち、全国での上映は落ち着いてきましたが、配給グループとしては、引き続き映画館での上映機会を得られるよう、頑張っていきたいと思います。

石川

主題歌チームとしては、これからも『ひゃくえむ。』を通して「らしさ」という楽曲に出会ってくれる人がたくさんいてくれたら嬉しいです。何年先もこの楽曲に出会ってくれた人が、より「らしさ」とヒゲダンを愛してくれるようなプロモーションを今後もしていけたらと思っています。

佐藤

作品が末永く愛されることはもちろん、劇伴が音楽的に評価を受けて広がっていく可能性もあるなと私は思っていて。音響効果の方がテレビ番組などのBGMとして使ってくれたり、何かのテーマに起用されたり……『ひゃくえむ。』を彩る音楽がより多くの方に届くように、音楽制作チームとして施策を練っていきたいです。

寺田

僕は『ひゃくえむ。』のグッズ制作にも関わっていますので、劇場上映やNetflixでの配信以外にも、引き続き『ひゃくえむ。』の魅力を伝えられるような商品や企画をお届けしていきたいです。

インフォメーション

劇場アニメ『ひゃくえむ。』絶賛公開中

Netflixでの世界独占配信予定
2025年12月31日(水)より開始
※世界190以上の国と地域での配信
※30言語の字幕、6言語の吹替版あり

公式HP:https://hyakuemu-anime.com
公式X:https://x.com/hyakuemu_anime 

©魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会

※ 記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります

記事を一覧で見る

Culture,
Future,
Adventureタグラインについて

Serviceサービス紹介

Contact
Twitter Instagram facebook LINE Youtube
Jp En